2024年12月 6日(金)・7日(土)

会 場
岡山コンベンションセンター
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会長挨拶

    • 第62回日本糖尿病学会中国四国地方会総会
    • 会 長 和田 淳
    • 岡山大学 腎・免疫・内分泌代謝内科学 教授

    この度、日本糖尿病学会中国四国地方会第62回総会のお世話をさせていただくことになりました。このような機会を与えていただき、皆様に深く感謝申し上げます。

    本学会のテーマは「地域とチームから発信するダイアベティスDX」といたしました。ダイアベティスという言葉は、サイフォンのように水があふれ出す状態を表しています。古く2世紀ごろ、トルコのカッパドキアの医師アレテウス(AD 81-138)が、世界で初めて糖尿病の口渇・多飲・多尿を克明に記載し命名しました。多尿になる病気のうち、無味の多尿の尿崩症(Diabetes Insipidus)と、蜜のような甘い多尿の糖尿病(Diabetes Mellitus)を18世紀の医師ウィリアム・カレンが分類しました。現在、中枢性尿崩症はバソプレシン分泌低下症と呼ばれており、ダイアベティスという言葉は、世界的にはもっぱら糖尿病に用いられています。両者の違いは何でしょうか。バソプレシン分泌低下症ではバソプレシンの補充で症状のほとんどが改善しますが、糖尿病はインスリンの補充だけでは解決しません。糖尿病とその合併症の成立には複雑なメカニズムがあるからです。ダイアベティスという言葉はそのすべてを包含しています。従って糖尿病の治療のためには、関与する多くのメカニズムを解明し、そして糖尿病のある方一人一人の病態を理解して、最も適した治療法を選択する必要があります。そのような成果を本学会で発表していただき、活発にご討議いただくことを期待しております。

    またこれらの研究成果を糖尿病のある方々まで届ける必要があります。しかしながら、わが国の地方は人口減少、少子高齢化、産業空洞化など多くの社会課題に直面しており、糖尿病診療も例外ではありません。デジタル田園都市構想は、デジタルの力で地方の個性を生かしながら、社会課題の解決と魅力の向上を図り、「地方に都市の利便性を、都市に地方の豊かさを」実現するプロジェクトです。岡山大学は、2021年1月から「吉備高原都市スーパーシティ推進協議会」におけるリードアーキテクトとして参画し、医療分野を中心に吉備中央町のスーパーシティ構想を支援してきました。さらに岡山県吉備中央町は2022年3月よりデジタル田園健康特区に指定され、岡山大学は支援を継続しています。DX―デジタルトランスフォーメーション(Digital Transformation)は2004年にスウェーデンのウメオ大学のエリック・ストルターマン教授によって提唱された概念で、その内容は「進化し続けるテクノロジーが人々の生活を豊かにしていく」というものです。地方の糖尿病診療にはDXが不可欠であると考えます。ダイアベティスDXに関する成果発表も大歓迎ですので奮って演題応募をお願いいたします。

    「地域とチームから発信するダイアベティスDX」というテーマはこのような思いから生まれました。多くの皆様と岡山でお会いできるのを楽しみにいたします。

    2023年11月吉日